環境省が令和6年度の全国調査結果を公表しました。河川や地下水でPFOS・PFOAの合計値が国の指針値(50 ng/L)を超えた地点は629地点。前年度の242地点から約2.6倍に増えています。ただ、この「2.6倍」をそのまま「汚染が2.6倍に広がった」と読むのは正確ではありません。調査データを地点単位で読み解き、数字が実際に何を示しているのかを整理します。
1. What the survey found
令和6年度調査で何が分かったか
環境省は毎年度、全国の公共用水域(河川・湖沼・海域)と地下水について、都道府県などが実施したPFOS・PFOAの測定結果を取りまとめて公表しています。令和6年度の調査結果は次のとおりです。
629地点
PFOS・PFOA合計値が指針値50 ng/Lを超過(前年度242地点)
26都府県
超過地点が報告された都府県(前年度22都府県)
108市区町村
超過地点が報告された市区町村(前年度71市区町村)
測定された地点の総数も、2,078地点から3,941地点へと大きく増えています。まずはこの2つの数字を並べて見てください。
2. How to read the numbers
「2.6倍」の正しい読み方
超過地点が2.6倍になった最大の要因は、測定そのものが増えたことです。測定地点が約1.9倍に増えれば、見つかる超過地点も当然増えます。「汚染が2.6倍に拡大した」わけではありません。
ただし、それで説明がつくのはここまでです。測定を増やしただけであれば、測定地点に占める超過地点の「割合」は変わらないはずです。実際にはこの割合も上がっています。
この数字が示していること
新たに測定された地点は、無作為に選ばれたわけではありません。過去に検出があった地域や、排出源が疑われる周辺など、「懸念がある場所」を重点的に調べた結果と考えられます。つまり2.6倍という数字は、汚染の急拡大ではなく「これまで調べていなかった場所を調べたら、そこにもあった」という実態の可視化と読むのが妥当です。
実際、前年度は超過の報告がなかった三重県・和歌山県・岐阜県・栃木県・石川県の5県で、令和6年度に新たに超過地点が報告されています。逆に言えば、まだ測定されていない地域の状況は、依然として分かっていないということでもあります。
3. Where and what kind of water
どこで、どんな水から検出されたか
約8割が地下水
超過地点を水域の区分で分けると、地下水が大半を占めます。
井戸水を飲用している場合はご注意ください
指針値を超過した地下水については、飲用に供されないよう都道府県などが井戸の所有者へ指導・助言を行うことになっています。井戸水を飲み水や調理に使っている場合は、お住まいの自治体の公表情報を確認し、必要に応じて水質検査を受けることをおすすめします。
都道府県別の状況
超過地点数の多い都道府県は次のとおりです。前年度からの変化にも注目してください。
熊本県(2地点→93地点)、岐阜県(0地点→39地点)、茨城県(1地点→30地点)のように、前年度からの増加が際立つ県があります。これらはいずれも、その地域で調査が大幅に拡充されたことが背景にあります。一方で、広島県(26地点→19地点)や沖縄県(32地点→31地点)のように横ばい・減少の地域もあります。
4. The highest readings
突出して高い地点
超過地点の多くは指針値の数倍程度ですが、桁違いに高い値が出ている地点も存在します。令和6年度の上位10地点は次のとおりです。
| 順位 | 所在地 | 区分 | PFOS ng/L |
PFOA ng/L |
合計 ng/L |
指針値比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 大阪府熊取町 | 地下水 | 150 | 73000 | 73,000 | 1,460倍 |
| 2 | 岡山県吉備中央町 | 河川 | <2.5 | 72000 | 72,000 | 1,440倍 |
| 3 | 大阪府摂津市 | 地下水 | 3.4 | 30000 | 30,000 | 600倍 |
| 4 | 千葉県鎌ケ谷市 | 河川 | 20000 | 1400 | 21,000 | 420倍 |
| 5 | 千葉県柏市 | 河川 | 15000 | 1100 | 16,000 | 320倍 |
| 6 | 千葉県柏市 | 河川 | 14000 | 1000 | 15,000 | 300倍 |
| 7 | 大阪府熊取町 | 地下水 | 18 | 12000 | 12,000 | 240倍 |
| 8 | 大阪府熊取町 | 地下水 | 1.5 | 6600 | 6,600 | 132倍 |
| 9 | 岡山県吉備中央町 | 河川 | <2.5 | 6400 | 6,400 | 128倍 |
| 10 | 大阪府摂津市 | 河川 | 5.7 | 5700 | 5,700 | 114倍 |
最も高かったのは大阪府熊取町の地下水で73,000 ng/L、指針値の1,460倍にあたります。岡山県吉備中央町の河川でも72,000 ng/Lが報告されました。これらの地点では、PFOSとPFOAのどちらか一方が突出して高いという特徴があり、特定の排出源の存在をうかがわせます。
河川や地下水の測定結果と、水道水の水質は別のものです
この調査は河川・湖沼・海域・地下水を対象としたもので、水道水の検査結果ではありません。お住まいの地域に超過地点があっても、そのまま「水道水が汚染されている」ことを意味するものではありません。水道水については各水道事業者が検査を行い、結果を公表しています。
5. New drinking water standard
2026年4月から水道水の基準が変わりました
PFOS・PFOAは長らく水道水の「水質管理目標設定項目」という位置づけで、検査は努力義務にとどまっていました。これが令和8年(2026年)4月から「水質基準項目」に格上げされ、合計値50 ng/L以下という基準の遵守と、定期的な検査が水道事業者に義務づけられています。
つまり水道水については、これまでより確実にチェックされる体制になりました。一方で、井戸水や、水道の末端に至るまでの環境中の状況については、引き続き自分で情報を確認する必要があります。
6. Check your area
自分の地域を調べる方法
当サイトでは、環境省が公表した令和5・6年度の調査結果(合計871地点)をそのまま収録し、地図と都道府県別・市区町村別のページで検索できるようにしています。数値はすべて一次資料から機械的に抽出し、全地点について環境省の公表資料と照合済みです。各ページには出典へのリンクを付けていますので、元の資料も確認できます。
家庭でできる対策
PFASは煮沸では除去できません。分子として安定しているため、沸騰させても水が蒸発する分だけ濃度はむしろ上がります。家庭で用いられる浄水方式のうち、PFASの除去率が高いとされるのは活性炭(特に粒状活性炭を十分な量・接触時間で用いるもの)と逆浸透膜(RO)方式です。
当社では、販売しているRO浄水器について第三者機関に水質検査を依頼し、水道水とろ過後の水を比較した結果を成績書の全文とともに公開しています。判断の材料としてご確認ください。
「除去できる」ではなく「除去できた」を、検査成績書で。
東京都世田谷区の水道水から検出されたPFOS・PFOAが、RO浄水器でろ過した後には定量下限(0.0000005 mg/L)未満となったことを、第三者機関の検査で確認しています。
- 環境省「令和6年度公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果について」(添付資料:令和6年度公共用水域及び地下水のPFOS及びPFOA調査結果一覧)
- 環境省「令和5年度公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果について」(同上)
- 厚生労働省・環境省 PFOS及びPFOAに関する水質基準の見直し(令和8年4月1日施行)
本記事の集計値は、上記1・2の調査結果一覧に掲載された全測定地点のデータから当社が算出したものです。指針値はPFOS及びPFOAの合計値50 ng/L。表中の「<」は定量下限未満、「ー」は未測定または報告なしを示します。
